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彩の国 連携力 育成プロジェクトIPW実習報告(秩父生協病院)

「自分らしさって何? その人の発言の真意はどこに・・・?」
~彩の国 連携力 育成プロジェクトIPW実習報告(秩父生協病院)~

『IPW』という言葉を聞いたことがありますか?

IPW(Interprofessional Work:専門職連携実践)とは、複数の専門職が連携協働し、利用者さん、患者さんの期待や要望に応えケアの質を向上していくことです。

近年、医療・介護現場は、超高齢社会、格差社会という背景の中、複雑で困難な事例が多数存在しており、各現場では多様な専門性をもったチームで対応していくことが望まれています。

このIPW実習は2012年度から行われており埼玉県立大学・埼玉医科大学・城西大学・日本工業大学の学部も学科も目指す職種も違う学生さんがチームとなり、埼玉県内の保健医療介護福祉事業所をフィールドとし4日間の日程で実習を行い、IPWの定義である「同じ場所で共に学び、お互いから学び合いながらお互いを学ぶこと」を実践しています。

今回はSGFAMの教育病院でもある秩父生協病院で施設ファシリテーター(以下施設FT)として学生さんの実習担当をされた総看護長の新井さとみさんから実習報告のお便りをいただきました。※写真はsaipeパンフレットより引用

「秩父地域で学ぶ」

・秩父生協病院の紹介はこちら→http://www.chichibu-ch.or.jp/

・教育病院紹介の記事はこちら→http://kateii-saitama.jp/455/

【新井総看護長】
今回の学生さんは看護学生さん、理学療法学科学生さん、栄養学科学生さん、生活環境デザイン科学生さんの計4名が参加してくれました。4名とも秩父には何も所縁のない学生さんばかりです(笑)
IPW実習では入院患者さんを担当してもらい、チームとして患者さんのケアプランを考える実習を行いました。 学生さんには患者さんの情報を事前にあまり伝えませんでした。実習の中で学生さんにはどんな情報が必要なのかを学生さんなりに考えてもらった方が良いと思ったからです。
私達病院スタッフは、学生さんにまず患者さんへの理解を深めてもらうためには、この秩父という地域を知ってもらい患者さんが暮らす地域の理解も必要と考え、地域包括支援センター訪問や、事務長の運転で、地域の説明をしてもらいながら車で地域めぐりを行い、さらにその後、患者さんの自宅周辺の街歩きを行いました。
学生さんからは「近くで買い物しないって言ってたけどわかる」「ここでは車がないと生活できない」などの感想も聞かれ、地域の現状を実感してもらえたと思います。その中で、学生から地域にあるデイケアを見学したいとリクエストが上がり、地域内に所在するデイサービスセンターの見学を行いました。デイサービスセンターで行われているプログラムの特徴(リハビリの内容や利用者の自主的活動の事など)を見聞きした結果、その患者さんのケアプランに取り入れることを考えてくれました。

「地域医療でのIPW実践者との関わりから学ぶ」

【新井総看護長】
患者さんのケアプランを考えるにあたり、病院スタッフへのインタビューを行いました。秩父地域の医療を実践している先輩スタッフとの関わりは学生さんにとっても新鮮な学びであり、日常的にIPW実践者として働く姿は学生さんの憧れになったと思います。
事前にスタッフには「聞かれたこと以外は答えないで下さい」と伝えました。なぜならスタッフは日常の業務や経験から、患者さんの情報をたくさん持っています。学生さんから質問を受けて、嬉しくてあれもこれも話してしまうと思ったので(笑)
スタッフとの対話の中でちょっと面白いやり取りがありました。環境デザイン科の学生さんがMSWに「胸ポケットに入っているペンの数と仕事の内容は関係しているのですか?」と質問されていました。その質問には私自身も驚きましたが、「多職種連携ってそういうことなんだな」「視点がひろがるって面白いな」と学生さんの発言から学ばせていただきました。

「チームが成長していく過程に関われる喜び」

【新井総看護長】
IPW実習では患者さんのケアプランを立てることが最終的な目的ではありません。もちろん、学生さんなりに患者さんに最適なケアプランを立てることは医療介護者としては必要な能力ではありますが、IPW実習では学生さん自身が「ケアプランを考える中でこのチームがどのように変化しているのか」というチーム形成のプロセスを観察することを意識してもらいました。施設FTは毎日のリフレクションで学生さんの気づきを促進させる役割を担いました。
学生さんのチーム形成のプロセスを観察して気づいたのは、前半は看護師、理学療法士の学生さんがリードして、栄養士、建築の学生さんが一生懸命ついっていった、という構図でした。しかし、後半は、栄養士、建築の学生も発言する回数が多くなり、自分の意図したことが伝わっているか、それは共通認識で良いのか、という会話がされていました。
実習初日からわずか3日間ですが、4人は良いチームになったと思います。

私自身施設FTとしての関わりでは、学生さんは当初ケアプラン目標を「自分らしく生活できる」と設定しました。私は「○○さんの自分らしさって何か、チームで共通認識できているのか?」と提起し、『自分らしさ』の部分を丁寧にすすめるように提案しました。施設FTとして「○○さんらしさを具体化して、そこの実現に専門性を発揮してもらう」「患者さんの発言の真意はどこにあるのか」「患者さんの意志を尊重する」を考えてもらうことにこだわり、学生自身に悩んでもらう経験を促しました。
3日目に院内報告会を行い参加職員からいろいろコメントもらえたことがヒントになり、更に『自分らしさ』を深めることができたと思います。

実習をサポートしていただいた教員FTより「学生のまとめは1日で化ける」と聞き(4日目の報告会では化けていた)、学生さんに励ましと期待を伝え、3日間の施設内実習を終了しました。
私自身、はじめての施設FTで試行錯誤でしたが、教員FTの先生方、病院スタッフや地域組合員さん、地域の事業所の協力をいただき実習を受け入れることができました。
患者さんの意志を尊重するという考え方にこだわったケアプランは、学生さんにとっては理想と現実のギャップを多分に感じる実習だったと思います。そんな中で、患者さんと向き合いながら、チームメンバーへの配慮や職種理解を進める学生さんの姿は秩父の医療に関わるスタッフとしても学びとなりました。

後日、学生さんからステキなお手紙をいただきました。
~お手紙抜粋~
『今後、社会に出ていく上で、多くの職種との連携はかかせないものになります。今回貴施設で体験させていただいたことを活かし、連携とは何かを更に考えていきたいと思います。』

『私自身、初めて患者様、他の職種の方からお話をお聞きすることができ、毎日が刺激的で、またたく間に実習が過ぎてしまったように感じ、以前より一層、病院管理栄養士として働きたいという思いが強くなりました。』

『フィールドワークから患者様らしい生活を考えることができ、貴重な経験が出来たと考えております。』

『今回の実習を通して自分自身が様々なことを身につけるというのも大事だけれど、他者との連携・信頼関係、誰かが誰かの為を思う気持ちがあれば様々なことができるというのを感じ、それらはどんな場面においても大切なことだと思いました。』

「また、お会いしましょう」

これからも多くの学生さんとの出会いを楽しみにしています。秩父にぜひお越しください。

秩父生協病院 総看護長 新井さとみ

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